CDN障害への備えに有効な「マルチCDN」とは?
はじめに
そのような表示不具合を解消するために、コンテンツを配信するのに使用されているのが「CDN」というサービスです。
しかし、そのCDNに不具合が発生し、インターネット上で大規模障害が起こったケースもあります。この記事では過去に発生したCDNに関する障害事例から、障害に備えられるマルチCDNのご紹介まで詳しく解説します。
CDNとは?
本来Webサイトの配信時には、配信元となるサーバ(オリジンサーバ)からユーザへ直接コンテンツを配信しています。しかし、サイトの同時閲覧数が膨大になるとオリジンサーバへのアクセス集中が発生します。
アクセス集中が起こるとオリジンサーバへの負荷が増大し、サーバダウンなどの障害を招きかねません。また、サーバダウンにはならなくともWebページの表示が遅くなるなどの不具合が発生することもあり得ます。CDN(Content Delivery Network/コンテンツ配信ネットワーク)とは、このような状況を回避するためのサービスです。
CDNの仕組みを簡単にご説明しましょう。
まずは、複数の地域に「CDNサーバ」を設けます。CDNサーバは、オリジンサーバからコンテンツを取得しキャッシュ(コピー)として保存します。そしてリクエストしたユーザからもっとも近いCDNサーバのあるネットワーク経由で、リクエストコンテンツを表示します。この仕組みにより、オリジンサーバへのアクセス集中を防止でき、ユーザ側のコンテンツ表示もスムーズにすることが可能となります。
CDNについて詳しく知りたい方には以下のコラムがおすすめです
参考コラム:CDNとは?CDNの基本からメリット・デメリット、業者選定のポイントを解説 |
CDNはユーザにとっても、コンテンツ提供元にとっても便利なサービスですが、その一方で過去には全世界規模の障害を引き起こしてしまったこともあります。次の項目では、2021年に発生した大規模CDN障害について解説します。
2021年に発生した大規模なCDN障害事例
2021年に米のCDN「Fastly」で大規模障害が発生し、さまざまなWebサイトや配信コンテンツが影響を受けた件では、日本国内でも被害がありました。
日本の大手ポータルサイトも大きな被害を受けた
2021年6月に起こったFastlyの障害では、楽天やTVerなど日本国内の大規模コンテンツも大きく影響を受けました。
原因はソフトウェアのバグとされています。具体的には、もともと存在していたバグがユーザ側の何らかの操作で有効となってしまったことがきっかけと見られています。これにより、CDNサーバの8割以上がエラーを起こしてしまったため、全世界的な障害に発展してしまったものです。
CDN障害でユーザが影響を受ける仕組み
前の項目でご説明したとおり、CDNはコンテンツを取得するためのユーザにとっての入り口にあたります。Fastlyの件は、その入り口にあたるCDNサーバに世界全域的な障害が起こってしまったものでした。こうなってしまうと、各地のCDNサーバがコンテンツを配信できなくなり、配信自体が停止してしまうのです。
Fastly以外のさまざまなCDNでも障害が起こっており、近年の例だと2020年のCloudflareの二度にわたる障害の事例があります。
CDN障害へ備えられる「マルチCDN」
マルチCDNの基本的な仕組みは、複数のCDNを利用して冗長化することにあります。従来のCDN(シングルCDN)は、コンテンツ全体を1つのプロバイダー経由で配信します。一方でマルチCDNは、複数のCDNサービスにトラフィックを分散する仕組みをとっています。分散された各ネットワークからコンテンツが配信され、ユーザが快適にコンテンツを受け取れるCDNからの配信が実現するのです。
複数のCDNから各設定値に則った振り分け配信を行うため、パフォーマンスの低下を極力防ぐことができます。
マルチCDNを導入するメリット
各エリアに最適なCDNを選定できる
例えば、日本在住のユーザへコンテンツを配信する場合、最適なパフォーマンスが日本国内で期待できるCDNを自動判定して配信CDNを選択します。その地域の地理的に最適なCDNを選択できるため、国全体のパフォーマンスを向上させられるというわけです。
各CDNのパフォーマンスデータの取得が可能
マルチCDNでは、各CDNのパフォーマンスを常に計測しています。計測データを得て、今後のパフォーマンス向上などさまざまな用件で活用することも可能です。
障害を自動検知し該当CDNを自動で除外できる
マルチCDNは、単一CDNが障害を起こしたときもそれを伝播させません。仮に、とあるCDNで障害が起こったとします。マルチCDNはそれを直ちに自動検知し速やかにそのCDNを除外できるため、コンテンツ停止を回避できるのです。
パフォーマンス不足のCDNを自動除外できる
マルチCDNではパフォーマンスしきい値設定をあらかじめ行っているため、設定値に満たないパフォーマンスのCDNは自動で除外してくれます。この仕組みのおかげで、ユーザ側でのコンテンツ表示の快適性を損ないにくくなっています。
マルチCDN導入時の注意点
多くのメリットを備えたマルチCDNですが、導入や運用に際してはデメリットもあります。マルチCDNを有効活用するに際し、それらの注意点も意識しておくと良いでしょう。
導入、維持管理にコストがかかる
マルチCDNを導入する際には、当然ながら相応のコストがかかります。そのコストに加え、複数のCDNを利用するとなると、各CDNの費用がかかる場合もあります。それらの出費に見合ったメリットが得られるかどうかを事前に検討し、サービス選定を慎重に行うことも大切になるでしょう。
各CDNの設定値を平準化する必要がある
マルチCDNサービスは、数多くのCDNから最適なCDNへとユーザを割り振る仕組みです。全ユーザが同等のサービスを受けられるよう、各CDNの設定値を均一にそろえなければなりません。
しかしそうはいっても、どんなCDNも同じ機能というわけではないため注意が必要です。各CDNの機能に依存せず、オリジンサーバ側で可能な設定はオリジンサーバで行うなど、柔軟な対応が必要となる場合もあるでしょう。
マルチCDNに適した配信コンテンツ
・大規模トラフィックが予測されるコンテンツ
・サービス停止を回避する必要がある有料のコンテンツ
・広域への配信を想定したグローバルコンテンツ など
「同時に大量のアクセスが発生する可能性がある」「障害などでの停止を避けたい」「全世界を対象としている」といった要件が含まれるコンテンツは、マルチCDNに適しているといえます。
障害に強いアクセリアのBrokering CDN
配信中のCDNが、万一アクセリアの監視基準内でレスポンスを返さなくなっても、他のCDNに切り替えて配信が継続されるため、安定したコンテンツ配信をユーザへ提供できます。
また、「Brokering CDN」の大きな特徴として、DNSベースの実装方法に加えてブラウザベースの実装方法を備えている点があります。
ブラウザベースのCDNは、ブラウザサイドでCDNの選択とコンテンツのダウンロードを管理。配信可能なCDNの情報を管理サーバから取得し、リアルタイムにコンテンツの取得先を決定します。コンテンツのダウンロードが遅かったり、接続に失敗したりした場合も直ちに他のCDNからコンテンツを再取得。ブラウザサイドでCDNを選択できることの強みです。
これだけの機能とパフォーマンスを備えながら、低コストで導入・運用できる「Brokering CDN」。障害に強い安定したCDNを導入したいとお考えの企業様は、ぜひアクセリアまでお気軽にご相談ください。
▶「Brokering CDN」のサービス詳細はこちらから
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