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[SC18レポート]新しいイノベーションも期待できるクラウドベース・スーパーコンピュータ

           

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最新のコンピューテイング技術、それをささえるネットワーク技術を中心に解説

 劇的に忙しくてしばらく何もコラムを書けていませんでしたが、なんとか渡米するチャンスを作り時間が確保できました。というわけで、11月に米国ダラスで開催されたSC18とその後に訪問したシリコンバレーのセキュリティ/ネットワークベンダーのEBCでの出来事を、秘守義務に違反しない範囲で少しレポートしてみます。

 SC18は、米国で開催されているスーパーコンピューティングの流れをくむ学会(総合展示会)です。日本からも東京大学や理化学研究所、国立情報学研究所(NII)など、スパコンを所有している組織やその活用事例の報告のため多くの研究者がここを訪れています。今年はテキサス州ダラスで開催されました。
(SC18について:https://sc18.supercomputing.org


(写真:会場エントランス)




 


(写真上段左:東京大学、上段右:理化学研究所、下段:国立情報学研究所)


 私が兼務する情報通信研究機構(NICT)も例年同様に展示ブースを会場内に設けています。JGN利用者の会期中の実験・デモのサポートや関係する研究成果の発表を行なっていました。


(写真:NICTブース)


 今回のレポートでは、展示会場で見た最新のコンピューテイング技術、それをささえるネットワーク技術を中心に気になった点をいくつか解説してみたいと思います。

会場内ネットワーク「SCinet」
 会場内のネットワークはSCinetと呼ばれ、各国のNREN(National Research Network)と連携して、出展者にネットワークサービスを提供しています。構築は、アカデミア(学生を含む)、産業界、政府機関などからのボランティアにより構成されており、最新の各種装置を統合して展示会場での高速ネットワークを提供しています。例えば、米国と日本の間は、情報通信研究機構が運用するJGN(日米回線はTrensPAC/PacificWave回線を利用)、SINETがNRENとして出展者に国際ネットワーク接続を提供しています。SC18の会場には世界各地から様々な高速ネットワークが引き込まれています。


(図:SCinet)




(写真: SCinet NOC機材)

次世代Ethernet 規格(400G Ethernet と QSFP-DD)
 会場ネットワークの中で特に気になったのが、Juniper Networksがコントリビューションしていた400G Ethernetです。バックボーンの3台の装置を相互に接続して実験運用をしていました(下図左参照)。インターフェースは、日本のInteropでも展示されていたQSFP-DDが用いられており、実用まであと少しという段階であるように見えました。
 一方で、Arista Networksも400G対応のスイッチ(7060PX4-32 )をコントリビューションしていました。こちらはおそらくOSPFのモジュールを用いた製品に見受けられましたが、実際の運用状態を見るとダウンリンクに接続先がなく(下図右参照)、まだまだ安定稼働に至っていないように見受けられました。

 
(写真左:SCinet内での400G Ethernet のトポロジ図(Juniper)、
 右:SCinet内での400G Ethernet のトポロジ図(Arista))

 今回のSC18には400Gの規格策定に主導的なポジションを持っているCiscoの製品は提供されていませんでしたが、市場に400Gの環境が出てくるのも、そう遠くはない印象を持ちました。実際にSC18の後に訪問したシリコンバレーの各社では、400G対応の製品の市場投入スケジュールも伺っており、関係する実証実験ネットワークやキャリアビジネスでの試験開始のタイミングについてもあわせて各社に相談しています。

 


(写真上段左:Juniper MX1008 400G QSFP-DD、上段右:Juniper PTX10008 400G QSFP-DD
 下段:Arista 7060PX4 400G OSPF )

200G Ethernet
 展示会場内のMellanoxブースでは、200G Ethernet のサーバNICとこれに対応するスイッチの展示がありました。サーバープールの高速化を考えると、こうした製品群も注意して見ておく必要があります。相互接続性や既存ネットワーク/サーバからのマイグレーションなど、いくつかの課題を克服して、サービスの高機能化を検討していくことになるんでしょう。

 
(写真左:Mellanox Connext-X6 200Gb/s Adapter、右:Mellanox QM8790)

クラウドベース・スーパーコンピュータ
 当社の事業分野であるCDNを対象にサービスを考える上で、クラウドベースのスパコンは魅力的です。もともとスパコンは非常に高価であり、リソースの共有が前提で遠隔利用のネットワーク技術とともに発展してきました。分散処理技術や仮想化技術(コンテナ化技術)などの発展で、クラウドベースの計算処理もスパコンの利用形態のひとつになってきています。目的によっては単体のスパコンよりも効率よく目的を達成できる可能性もあります。単体型のスーパーコンピュータから分散型のスーパーコンピュータの時代に。アマゾンやGoogleがSC18での存在感を増し、これまでスパコンを所有できなかった研究者にもその計算資源が利用できるようになることで、新しいイノベーションが期待できるのではないでしょうか?
(AWSのHPCについて:https://aws.amazon.com/hpc

 
(写真左:Google Cloud、右:AWS)

コンピュータの冷却

 スパコンの展示会ならではの風景に、システムの冷却機構があります。大きな冷却用配管をどのように取り回すか?といった実装上の工夫から、特殊な冷却液を活用した「液冷」システムまで、さまざまな工夫が見て取れます。

 


(写真上段左:Lenovo Neptuneの冷却配管、上段右:ラックの冷却配管
 下段:液冷コンピュータ)


宇宙空間とコンピューティング
 HPのブースには、国際宇宙ステーションの大型模型が展示され、宇宙空間で活躍するコンピュータの更新プロジェクトについて説明が行われていました。8インチのフロッピーが現役のシステムもあると説明され、生命維持に使われているかなり古いコンピュータを最新の宇宙線対応のコンピュータに置き換える困難さをブースで説明していました。

 
(写真右:宇宙ステーションモデル、左:Supercomputing inスペース)

海外の研究機関の動向
 昨年までは、出展においても来場者についても中国の活躍が目立っていましたが、トランプ政権の対中政策が影響しているのか、めっきり中国の出展・来場が減少しているように感じました。国際的に科学技術の発展にどのように参画していくか、スパコンは戦略物資とも言われていますし、輸出制限もかかっています。科学者・研究者として複雑な心境です。

シリコンバレー訪問記

 山火事で煙ったような空が続きます。気になる程度には、焦げた匂いが蔓延しており、爽やかなカリフォルニアという印象が吹き飛びます。今回訪問したベンダーは、Cisco/Juniper/PaloAlto/Fortinetの4社になります。2日間の日程で、午前午後と1日に2社訪問する少し強行日程でしたが、有意義な時間を過ごすことができました。

 訪問した各社では、私がそれぞれ兼務している職務の立場で(NICTの研究員の立場とIPA専門委員の立場)、意見交換や予算化のための情報収集、機能改善などをリクエストしています。今回は、

 ・産業システムセキュリティ(非IPプロトコル通信へのセキュリティ装置の対応)
 ・400G Ethernet 対応装置の出荷予定時期と予算化のための費用感
 ・2月に予定しているNICT/IPAでの実証実験への協力の依頼

が主な相談点でした。加えて現有する既存の装置についての機能改善の要望などを、その必要性とマーケット感を説明しつつ、実装プランに乗せてもらう交渉をするといった具合です。

(おまけ)アメリカでの食生活



 

(写真:ロサンゼルスで食べた蟹(Captain Kidd’s) )


(写真:サンフランシスコで食べた蟹(Thanh Long))

 
(写真:48oz のトマホークステーキ)


―――――

 クラウドベース・スパコンの利用形態のひとつに、ログ解析やAIによるサービス応答なども考えられます。当社と一緒に開発してみませんか?(ぜひとも開発資金の大半の提供を…笑)

小林 和真

奈良先端科学技術大学院大学 客員教授
慶應義塾大学政策メディア研究科 特任教授
制御システムセキュリティセンター 顧問
情報通信研究機構 短時間研究員
ファットウェア株式会社 代表取締役社長
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