DebConf 2018 in 新竹 レポート
Debianプロジェクトとは
Debianプロジェクトはフリーでオープンソースなソフトウェアを完全にベースとしたすべての必要なユーティリティとプログラムとともにコンピュータオペレーティングシステムを作成するために、1993年に設立されました。
これはLinuxカーネルをベースとして、50,000を超えるフリーでオープンソースのソフトウェアパッケージが、主にボランティアによって構成されるチームによって管理されています。
Debianシステムには、インターネットブラウザー(Firefoxなど)、オフィススイート(LibreOfficeなど)、さまざまなメールユーザーエージェント、写真とビデオ編集ソフトウェアなど、現代のデスクトップ環境に必要なすべてのプログラムが含まれています。
しかし、Debianはデスクトップによく使われるだけでなく、高い安定性、優れた保守性、そして最高レベルのアップグレードパスがあるため、サーバー環境にもよく利用されています。
DebConf(Debian Developers Conference)について
この会議は2000年以来毎年開催されていますが、2018年は台湾の新竹にある國立交通大學で、アジアで初めてのDebConf開催となりました。
私は10年以上にわたりDebian開発をしていますが、初めてDebConfに参加しました。 そして、下記2つのプレゼンテーションを行いました。
・「Neo4jとDebianのパッケージの分析(Analysing Debian Packages with Neo4j )」
(アクセリアコラムでも関連記事があります:コラム1、コラム2、コラム3)
・「漢字での組版の状況(Typesetting with Kanji (with TeX in Debian))」
いくつかの発表内容を紹介します
■Heightening security of package distribution by Benjamin Hof
開会式の後、Benjamin Hof氏は、パッケージの配布におけるより良いセキュリティについての発表をしました。アイデアは非常に有望に見え、実際のリポジトリ管理にどのような方法があるのかがわかりました。
■Debian Science and Debian R Packaging by Andreas Tille
Andreas Tille氏は、これらの分野におけるパッケージング活動について報告しました。Andreas氏は、パッケージをすばやく作成・更新することが可能なスクリプトを発表しました。簡単なパッケージングを反映し、アップロードできるものには非常に厳しい規制があるCRANには大いに感謝しています。CTAN(TeXアーカイブ)は残念なことに歴史的に厳しい規則を持っていないので、パッケージングはずっと難しくなります。
■git-debrebase by Ian Jackson & Sean Whitton
git-debrebaseはgitでDebianパッケージを管理するための新しいツールです。 私はgitのトリッキーな使い方に非常に感銘を受けました。しかし、残念ながら、1つ弱点が残っていました。現在は、gitの大きな特徴の1つであるバラバラになったgit履歴の管理機能に対処できずに、コラボレーションを完全にサポートしていません。 幸いにも、QAセクションで質問したところ、普通のブランチの場合は問題ないとのことでした。
■Server freedom: why choosing the cloud, OpenStack and Debian by Thomas Goirand
より多くのサービスがクラウドに移行するにつれ、クラウドロックイン(あるプロバイダから離れられない)問題がますます顕在化しています。Thomas氏はOpenStackとその周りのツールに関して興味深い発表をしました。 非常に有望で技術的にも高いレベルでした。
■Deep Learning BoF by Mo Zou
Mo氏は、Deep LearningツールをDebianに移植する際の問題について報告しました。GPUアクセラレーションの専用ドライバが推奨される純粋なソフトウェアだけでなく、非フリーライセンスになることが多いデータセット(事前訓練されたデータ) は、Debianへの統合に問題が生じます。 機械学習の研究者を中心に、これらに対処する方法を活発に議論しました。
■Debian Java by Markus Koschany
この発表では、Javaプログラムとライブラリのパッケージングツールの概要、Maven、Ant、GradleなどのJavaビルドツールとの相互作用について説明しました。
■Rethinking font packages—from the document level down by Nathan Willis
デザイン、レイアウト、フォントという、私の個人的な関心事がテーマだったので、この話は私のハイライトの1つでした。 特定のプロジェクトのフォントセットを選択する際の典型的なユーザのワークフローから始めて、Nathan氏はLinux環境とDebianにおけるフォントの現状を議論し、改善を提案しました。 残念ながら、実際にはフォントスタック、管理、システム構成などの完全な書き直しが必要とされ、これはかなり大きな作業です。
■My crush on GNU Guix by Vagrant Cascadian
Debianのパッケージ管理は優れているため、Debianをサーバでよく使用する理由のひとつとなっています。 しかし、それには問題もあります。特に、インストールされている同じパッケージの異なるバージョンを持つのに対応していません。Guixは、機能的で、トランザクション型のアップグレード、ロールバックなどの機能を備えたパッケージマネージャです。 私は恥ずかしながら知りませんでした…。この素晴らしいツールを私に紹介してくれたVagrant氏に非常に感謝しています!
■Cryptsetup in Debian by Guilhem Moulin
私は国内外沢山の旅行をしますので、旅行中にラップトップが盗まれてしまうことが心配で、それがラップトップを完全にディスク暗号化している理由の1つです。Cryptsetupはそれ(そして他の多くのものも)を可能にするツールなので、私にとって非常に重要です。Guilhem氏は、現在の状況と今後の計画について興味深いプレゼンテーションを行いました。
■Gnuk+GnuPG Explained for Debian Developers and Users by 新部裕(と家族)
GnuPGキーはDebianにパッケージをアップロードするための中心的なツールです。 したがって、これらはDebianだけでなく、GnuPGに依存してパッケージの検証や認証が行われています(TeX LiveはGnuPGを使用してデータベースに署名しています)。 新部氏と彼の家族は、鍵交換の仕組みについて実生活を模した面白い実演を行い、続いてGnuPGハードウェアトークンに関する技術的な説明を行いました。
■SUSI.AI and Personal Assistants in Debian by Mario Behling
パーソナルアシスタントはどこにでもあり、お使いの携帯電話はおそらくSiriまたはGoogleアシスタント機能がついています。多くの家庭では、スマートスピーカーがあなたの声を聞いています。 しかし、これはすべてオープンソースではなく、どのような情報を集めているかは誰も知りません。Mario氏は、オープンな(オープンソース、仕様、アクセス、ツール)のパーソナルアシスタントを作成し、新しいスキルを開発する方法を発表しました。
■Issues in the Font Rendering Stack for Non-Latin Scripts BoF by Max Harmathy
DebConfが非ラテン文字の国で開催されたことで、Debianの非ラテン文字のサポートについていくつかの発表がありました。今回のディスカッションでは、CJK(日中韓)やRTL(右から左に読むアラビア語など)の文字に対して多くの問題に触れました。タスクフォースのようなものを作成して、より良いツールの実装をさらに進め、これらの言語のDebianでのサポートを向上させることは良いことでしょう。漢字の組版についての私のプレゼンテーションとも深い関連性がありました。
■Share our Scripts by Paul Wise
Paul氏が育てた面白いアイデアは、最も面白く、役に立ち、恐ろしいスクリプトを交換するセッションでした。 多くの開発者やシステム管理者は日々、あらゆる種類の有用なことを行うあらゆる種類のスクリプトを書いており、それらは文書化されずしばらくすると忘れ去られます。
そこで私たちは、たくさんのgitスクリプトだけでなく、いくつかのより一般的なVCSスクリプトを含むベストな例を出し合いました。 私は自分自身のメール更新スクリプトと、ブログで報告しているsvn-gitコラボレーションセットアップスクリプトを寄稿しました。
■AppArmor 3.0 by Seth Arnold
サーバー(またはデスクトップ)を強化することは、毎日の攻撃の量が多い場合には良い考えです。 AppArmorは、プロセスを権限管理の中心に置くこれらのシステムの1つです。
DebConは新しい技術を学ぶ絶好の機会であり、技術者同士の交流の機会でもあります
他のイベントではチーズとワインパーティーがありました。参加者が母国からチーズとワインを持って(私は日本酒と干し魚を持参)、遅くまで話しながら美味しいチーズとワインを楽しんでいました。
会議の夕食は魚のレストランで開催されました。そこでは、豊富な食材や私にとっては未知の料理がたくさんありました(エビの塩釜焼きのような料理も)。また、DebConは週末にフルプログラムがあったため、水曜日には様々なツアーを開催していました。私は暑さから逃れるために沢登りツアーを選びました。夕方には、ライブ音楽と素晴らしい刺身と肉がいっぱいの素敵なBBQがありました。
ソーシャルインタラクションと高度な技術レベルの組み合わせにより、この会議は本当に良いものとなりました。私は次のDebConfにも参加したいと思っていますが、来年はブラジルなのでちょっと遠くて難しそうです。
(写真:Aigars Mahinovs)
■英語版はこちら
DebConf 2018 in Hsinchu, Taiwan
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